野村克也夫妻の命を奪った心臓の病。決して「突然死」ではなかった、その理由とは
心臓・血管の病気の専門医が明かす病の真実-①
かように心臓病は「突然死」のイメージが強いが、心臓血管研究所・所長の山下武志氏によるとそれは事実と異なっている。日本一わかりやすく基礎知識を解説したという氏の著書『心臓・血管の病気にならない本』(KKベストセラーズ・2/27刊)から見てみよう。
■心臓病=突然死ではなく、心臓病=慢性病
あなたは心臓や血管の病気と聞くと、どういうものを想像されるでしょうか?
あるとき「うっ」と急に胸が苦しくなったり、急激な頭痛に襲われたりして倒れてしまい、それっきり。そんなイメージの方が大半なのではないでしょうか。いわゆる「突然死」です。
しかし現代では、心臓・血管の病気によって突然死するケースは多くありません。もちろん、残念なことに突然死する方もゼロではありませんが、そういう方は医療の進歩によってどんどん減っています。だからこそ、未曽有の超高齢化社会が訪れているのです。
現代における心臓・血管の病気の正しいイメージは、徐々に悪化していく「慢性病」です。その点では、がんにとてもよく似ています。ところが不思議なことに、がんと心血管疾患のイメージはまったく違います。どういうわけか、心血管疾患だけに突然死のイメージがついてしまっているのです。
まずは、心血管疾患=突然死、というイメージを捨てることからはじめましょう。心血管疾患は、ご自身で管理し、付き合っていくべき慢性病なのです。
ただし、心血管疾患とがんとの間には、大きな違いもひとつあります。それは、心血管疾患は観察しやすく、予防も治療も比較的簡単だということです。心血管疾患を正しく理解すれば、正しく恐れ、正しく予防することができます。
■命を奪うのは「血栓」
読者の皆さんにとって、もっとも関心があるのは、命に係わる事態を防ぐことでしょう。
まず知っておいて頂きたいのは、「心臓病=死」のイメージもまた間違っているということです。きちんと治療した心血管疾患が死につながるケースは決して多くありません。
ですが、心血管疾患で亡くなっている方がいることも事実ですから、まずは命との関係から解説しましょう。
無数にある心血管疾患ですが、もし命に直接係わる事態が生じるとしたら、その原因はおそらく「血栓(けっせん)」です。
血栓とは読んで字のごとく「血の栓」であり、血管の内部にできる血の塊です。血栓ができると血流が妨げられてしまうため、臓器への血流が足りなくなり、そのことによって致命的な事態が引き起こされるということです。たとえば脳の重要な血管に血栓が詰まると脳梗塞を、心臓の重要な血管に血栓が詰まると心筋梗塞を引き起こします。
したがって、極論ですが、「血栓の形成さえ防げれば、心血管疾患で命を落とすリスクは激減する」ともいえます。
では、血栓はどのように作られるのでしょうか?
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KEYWORDS:
心臓・血管の病気にならない本
著者:山下武志
日本人の半数は心血管疾患で亡くなっている!
血液を綺麗にし、心臓を鍛えて、健康に長生きする方法とは?
日本人の死因2位・3位※を占める心疾患と脳血管疾患は、両者を足すと死因1位のガンに匹敵します。また日本人の9割は不整脈を患っているともいわれています。
しかし、心臓や血管の病気はガンとは異なりメディアの注目度は低く、一般の人々の知識は驚くほど不正確です。著者はかねてよりその状況を憂い、正しい知識の普及に務めてきました。「心臓と血管の病気は慢性病」「年間2万人が命を落とす危険な不整脈=心室細動」など、「長生きして健康でいる」ために欠かせない、おだやかな血液と余裕のある心臓を作る習慣を伝授します。
著者は日本一の「不整脈」の名医と言われ、これまでテレビ『NHK健康チャンネル』や『世界一受けたい授業』など多数のメディアに出演しています。
※2017年度・厚生労働省調べ
目次
第1章 心臓・血管の病気は怖くない
第2章 心臓・血管の病気はこうして起こる
第3章 誰も知らない不整脈の真実
第4章 余裕のある心臓とおだやかな血液を手に入れる
第5章 心臓・血管の治療を成功させる